1000匹の犬

サイタローの感想ブログ

こんな状況だからこそ読みたい「羅生門」(意識低い系感想文)

みなさん、「羅生門」覚えていますか?

 

羅生門

 

多分高校の時とかに国語の授業でやりましたね。

この「羅生門」の状況、今の世間と超~~~似てるんですよ…

 

 この二三年、京都には、地震とか辻風つじかぜとか火事とか饑饉とか云うわざわいがつづいて起った。そこで洛中らくちゅうのさびれ方は一通りではない。

 

え??今の日本じゃんこれ…

それで主人公の浪人なんですが、

 

主人からは、四五日前に暇を出された。前にも書いたように、当時京都の町は一通りならず衰微すいびしていた。今この下人が、永年、使われていた主人から、暇を出されたのも、実はこの衰微の小さな余波にほかならない。

 

はい、経済衰退からの失業コンボ。これは未来の私ですか??

 

「羅生門」の話はこの浪人がなんやかんやするお話なんですが、

なんと青空文庫で丸々無料で読めちゃいます。

しかもたったの12ページ!(文字の大きさによります)

読もう!!!(ダイレクトマーケティング)

 

私も今回久々に読みましたが超面白かったので、せっかくなので何がどう面白かったのか書いていこうと思います。

当然ですがめちゃくちゃ主観が入るので先入観なく物語を摂取したい人は先に青空文庫を読みましょう。

 

 

はい、この「羅生門」、何が良いかというと主人公の浪人が超~~~~~普通の人間なところです。

そして普通の人間ってなかなかにクソだな!と思うまでがワンセットです。

 

浪人の性格を一言で表すと、「正義感振りかざしプライド激高自己正当化マン」です。

でもいいですか、この浪人は超普通の人間なので、つまり概ね人間はクソということでなんですよ。わかりますか??(?)

 

羅生門にたどり着いた時点の浪人、プライドがもうズタボロです。

ある種特権階級の武家勤めから一転無職ですよ。

仕事も長年勤めていたらしいし、きっと根は真面目なんでしょうね。

でも家も仕事も失って、世間は大不況だし、みんな自分のことでいっぱいいっぱいで助けてくれる人もいない。もう八方塞がりなの。

それなのに中途半端に倫理観を捨てきれないもんだから犯罪を犯す勇気もない。

ね。超普通でしょ。こんな人たぶん世の中にいっぱいいますよね。

 

こんな限界状態の浪人の前に現れてしまったのが盗人(?)のお婆さんです。

色々限界状態の浪人の前に、こんな立場も物理パワーも弱い人間が現れた!

さあどうする浪人!!

……正義感を振りかざし、問い詰めて脅すという行動に出ます。

 

「てめえ一体なにしてんだ!お天道様が許さねえぞ!(意訳)(羅生門は雨で夜です)」

 

はい、もうね、正義感ギラギラ。ノリノリで問い詰めますよ。

だってこれは現時点で自分に一切非がない状況。絶対に勝てる戦いだからね。

 

でもお婆さんもまた反論するんですよ。

「この女(被窃盗)だって悪いことしてたし!しかももう死んでるし!」(意訳)

「生きてる人間が死んだ人間を利用することの何が悪いんじゃ!生きるためなんじゃ!」(意訳)

 

う、ウワーーーーーー!

これリンダリンダの歌詞にあるやつ…

『弱い者たちが夕暮れ さらに弱いものをたたく』 でしょ…弱肉強食…

と、読者がヒエーーーとなっているのと同時に、浪人も若干引きます。

何が正しいかなんて分かりませんが、せっかく浪人はここで一回冷静になれたので

「ばあさん落ち着けよ…それ倫理的にあんまりよくないし…」って言ってあげられればまた違ったんじゃないですかね…

違っただけでそれが良いかは分からないですが…

 

お婆さんの発言に引いて一瞬冷静になった浪人。

いろいろ吹っ切れて何をしたかというと、逆にお婆さんに対して追いはぎ(窃盗)をはたらいてしまう。

捨てゼリフは

「じゃあお前がこうされても仕方ねえってことだよな!」(意訳)

 

す、救いがない……

浪人も限界状態だったことが分かりますね。

「絶対に勝てる相手」、「自身の困窮した状況」、「立場が下と思っていたやつに口答えされてイラついていた」、「人目がない」……

まあ挙げればきりはないけど、様々な条件が重なった結果、魔が差して犯罪を犯してしまったわけです。

 

これ、絶対自分がこうならないなんて言えますか?

言えないですよね。

よくニュースで言ってる「カッとなってしまった」ってやつでしょ。

生きるためには仕方がなかった、で犯罪を犯す人ってこれでしょ。

 

この浪人の行為を許容できるかできないかで、その人の倫理観が分かりそうですね。

ちなみに私は許容できない派です。

(浪人のどこが気に入らないかというと、相手が自分より弱いからこの行動に及んだんだろうところ)

(相手がムキムキ男だったらやってない)

(…ムキムキ女だったら?)

 

何が言いたいかというと、もしこういう判断を迫られたときに後悔しない選択肢を選べるよう、「羅生門」を読んで予行演習しましょう。

すべての物語は人生の予行演習だよね。(今めちゃくちゃ良いこと言った。)

 

物語は浪人がはぎ取った服を抱えながら夜の京都へ逃げていく描写(しかもタガがはずれてこれから盗みに入りにいくぜ!みたいな後ろ姿)で終わりますが、

私の予想(妄想)だと、このあとアドレナリンの分泌が切れた浪人はきっとまた迷います。

「盗みに入るとかそんな悪いことしていいの?いくら生きるためとはいえ犯罪じゃんそれ…」

冷静になって倫理観が戻ったのかと思いきや、違います。

街には自分より弱い人間がそうそういないから。

自分が勝てる相手がいないから奪えない、を正当化して「盗みに入るなんてそんな…」ってやるわけですよ。

でもきっとまた「勝てる相手」がいたらやりますよ。

1度やった人間はまたやります。知ってる。

 

けれど、世の中そうそう上手くいかないので、きっと都合よくそんな人間に出会わないまま浪人は飢えて死んでしまうんじゃないかな。

で、身寄りもいないので死体は羅生門に運ばれるわけですよ。

お婆さんも身ぐるみはがされてたし、きっとあの後死ぬよね。

まあ結局木っ端の人間がどうこうしたところで何も変わらないんですよ。

「死」のみが平等…虚無……

 

という話です!!(そうか??)

皆さんこれを機に人生の虚無感について考えましょう(?)。