1000匹の犬

サイタローの感想ブログ

やっぱり怪異より人間のほうが怖くない??という「ぼぎわんが、来る」感想

積ん読解消シーズンなので「ぼぎわんが、来る」を今さら読みました。

超面白かったです。

この本の好きなところは、「ハッピーな人間が最強」というのがずっと根底にあるところですね。

そうなんだよ。本当は他人とか世間とかどうでもよくて、自分がハッピーでいることが何よりも大事なんだよ。

でも現実は難しいんだけどね…。

私は現実と戦う話が好きなんだよな…(己への理解を深める)

 

以下、ネタバレあり感想。

 

ぼぎわんが、来る (角川ホラー文庫)

 

 

この話、明らかに秀樹が嫌な奴っぽく書かれていたんですが、

(最後、「それでも家族を守った」風に描かれたけど、別に好感度は上がらなかった)

なんていうか、物事には多くの場合理由があるじゃないですか。

秀樹はなんであんな性格になってしまったんだろうね??

 

秀樹は、いわゆる順風満帆(風)の人生を送ってきているんですが、よくみるとあんまり挑戦してないんですよね。

起伏がない?というか…(この発言は完全にブーメランです)

 

自分の偏差値なら確実に合格できて、実家から通える大学に、大した希望もなく進学。 

友人たちに流されるようにして東京の企業にエントリーし、面接。いくつかの企業から内定をもらった。 

勤務態度は可もなく不可もなく、というところだろう。 

 

あえて「自分がそこそこのポジション」でいられる進路に進んでいるよね……

「失敗」しない進路。

 

きっと秀樹は自分が挑戦できなかったことにコンプレックスを抱いていて、

(その証拠に、職人だったり大学教員になったいわゆる「普通じゃない」友人のことをずっと覚えてる)

でももう大人になってしまったから、「普通」からランクアップするための残された手段が「結婚」そして「育児」なんじゃないでしょうか。

それを達成するために、コントロールが効きそうな自分より弱い立場の香奈と結婚した、と。

…ここまで書いてきて気づきましたが、私は「勝てる戦いしかしない」人間が嫌いですね。(それが賢い生き方ということは分かる…)

 

秀樹と香奈の間に本当に愛があったのかもしれないですけどね。

真実はわからない…

でも結果として、あのイタい育児状況をしてしまっているわけで。

頑張ってる風イクメンパパなら、べつに勉強も運動も顔面も必要ないですもんね。

承認欲求のコスパがいいんですよね。

 

そしていわゆる「普通じゃない」職業についている唐草も普通(風)の秀樹に嫉妬してあんなことになってしまうし~~~~~

まあ私はあれは秀樹が悪いと思うんですが~~~~~

みんな色々葛藤しながら生きてるんだね…やっぱり人と比較するのはよくないね……

もっと楽しく生きてもいいんじゃない?という気持ちです。

でも人生に葛藤している人間をみるのは好きなので登場人物たちはもっと葛藤してね(ハート)

 

どうすれば秀樹がまっとうに父親できたか考えてたんだけど、

香奈と結婚してしまった時点で無理じゃないでしょうか。

だって秀樹は完全に香奈のことを下に見ているよね。少なくとも対等には思ってないよ。

香奈に何言われても響かないよね。

秀樹は自分のことしか信じていないよ。

 

ていうかマジで秀樹は人間の嫌なところを濃縮している。

弱いくせに強がって、プライド高いから自分のミスを認めないの。

で、立場が下(と認識している)の人にミスを指摘されたら逆ギレして誤魔化す。

無理~~~~~~

人間って嫌だね~~~~~~~~

はい、取り乱しました。

 

これだけ秀樹無理、嫌い!って書いてますが香奈のことも全然好きにはなれません。

仕事やめろって言われたから辞めた、なにも言わせてもらえなかった、いつも無計画の旅行で嫌だった…

……受動的なくせに、人のせいにして文句ばっかり言うって……

駄目です。嫌いなタイプです。(嫌いなタイプが多すぎる)

 

この小説は、そんな人間の嫌なところをきっちり描いているから好きです。

男も女もどちらも嫌。…人間不信になってしまう。

これはただの希望ですが、香奈が途中一回でもキレていたら、秀樹は改心できていたかもしれないですね。

実際はキレないし改心もしませんが。

 

 「結婚」および「出産(子供)」を人生一発逆転の手段と考えている人は男女ともに沢山いますよね。

野崎に無意識子供マウンティングしてきた同級生たちは、どうでしょうか?

人生幸せすぎて視野が狭いのか、現状に不満を感じているから野崎にマウントとって安心したかったのか…

多分前者だと思いますが……

「悪意はない」って免罪符のように使われますが、私の認識では想像力の欠如は罪ですね。

…だめだ。リア充への嫌悪があふれてしまう……

そんなこんなで、野崎が同級生嫌いでしかもそれが自分の嫉妬のせい、と自己認識している点にすごく好感がもてますね。

野崎ももし子供がいたら(無精子症じゃなかったら)また違ったんだろうな。

自分にもできないことがあると自覚している人のほうが好きです。

 

その点、真琴があれで他人にやさしいのは本当にすごいことですよ。

特殊体質(霊能力)持ちで人が手に入る幸せが手に入らないなんて、人間嫌いになってもおかしくない。

でも真琴は人間(子供)が好きなんですよ。

それって超すごくない??

真琴がこんなに他人に献身的に振舞ってしまう理由が何なのか、気になる…

ミゾがどうの、も分かるけどそれ以外にも何かあるのではないでしょうか…

 

人間嫌い!っていう感想ばかりになってしまいました。

でも秀樹が殺されるシーンとか、ぼぎわんが狡猾で怖くて面白かったです。

歩きにくい道をつくるために皿に入れた水を敷き詰める、って光景が容易に浮かぶし異様で怖かった。

あと秀樹の同僚が完全にとばっちりでかわいそうだでしたね。

それと琴子が自分の弱み(自己への呪い)も全部使って対峙して勝つ!ってやったのは超シビれました。かっこいい。

 

総評すると、ぼぎわんが、来るは最高のエンターテイメント小説でした。

続編もこれから読みます。楽しみ!