1000匹の犬

サイタローの感想ブログ

星新一作品の中に誰しも必ず刺さる一編が見つかるらしい

こんにちは。

星新一を知っていますか?

1000を超える超面白短編を世に送り出したSF短編の神様みたいな人です。

教科書とかにも載ってたよね。

 

幼い頃に読んでなんとなくずっと覚えている話ってあるよね。

最近分かったんですけど、そういうのって自分の嗜好へ多大な影響を与えているっぽいんですよ。

私にとってそれは星新一の「ひとつの装置」という話なんです!!!!

 

妖精配給会社 (新潮文庫)

 

どんな話か書きます!!

(全編でもたった17ページでお手軽でオススメです)

 

 

主人公はとある国立研究所の所長。

これまで真面目に実直に働いてきたから、地位と権威を得たタイプの所長です。

そんな所長、あるとき会計の監査官に研究費の不正流用が見つかってしまう。

 

「いったい何に使ったんです。女?酒?ギャンブル??」

「悪いこととは分かっていたが、人類のためにどうしても必要なんだ」

 

所長は流用した研究費に加え、私財をもなげうって1つの機械を作製していた。

ことは急を要する。予算の申請を待ってはいられない。

これは私の学者としての最後の研究。

使用用途上、作成途中で目的を公にすることはできないが、責任をもって最も人道的で、現在の人類に必要なものといえる。

 

熱意に圧された監査官。

あなたほどの人がそこまで言うのなら信じましょう。

予算の流用も私が適当に報告します。追加予算の手配も行いましょう。

ただし、完成後は公式に発表することが条件です。

 

秘密の研究をかぎつけた各国の諜報員の詮索や、多大な税金がつぎ込まれる市民からの不満を意にも介さず、かくして装置は完成した。

完成した装置は平場の中央に据え付けられ、完成発表会が催された。

これまでその装置に関する情報は一切が完璧に遮断されていたため、世界中の注目が集まる中、当然所長に説明が求められる。

 

「これはなにもしない装置です」

「本当になにもしない装置です。なにもしないほうがいいのですよ」

 

当然、会場は紛糾。しかし、これ以上の詳しい装置の説明はなかった。

ただ、人類に必要な装置だ、という説明があるのみだった。

わけのわからないまま発表会は終了となるのだった。

 

その後、各国の諜報員が真意を探ろうと装置の分解・破壊・解析に挑んだが、莫大な研究費を投じて開発された特殊な合金にはまるで歯が立たなかった。

その装置は金属製の大きな円柱型をしており、左右に腕のような部品がついていた。

広場に据え付けられた装置は、誰もが近寄り、触ることができる。

人々の注目を集めたのは中央に出べそのようについた押しボタンだった。

当然、所長からそのボタンについての説明は一切なかった。

 

みなあのボタンこそが装置を起動するものだろうと考えた。

ある時衝動を抑えきれず、とうとうボタンを押すものが現れた。

人々は不安と後期の視線をもって行方を見守った。

 

ボタンを押すと同時に装置から機械の作動音が鳴り始めた。

すると左右の腕が動き、押されて引っ込んだボタンをもとの位置に戻した。

それから腕はゆっくりと元の位置に戻り、その後いくら待っても次の動作に移らなかった。

 

何度ボタンを押しても、腕が動き、ボタンを戻して動作を終えた。

装置の作用が判明すると、非難の矛先は所長にむかった。

 

「本当になにもしないでしょう。これを作るのには実に苦労しました」

「いけませんでしたか。撃墜不能な核ミサイル、毒ガス、殺人光線、細菌兵器のほうがお気に召しましたか?」

 

巨額を投じ意味不明な道楽装置を作った責任問題を問われたが、最終的に所長は精神病院に送還された。

所長は弁解も抗議もせず、思い残すことはないというふうに数年後、静かに息を引き取った。

 

製作者は世を去ったが、装置は変わらず広場に残された。

装置についての極端な騒ぎがひと段落した後も、人々はボタンを押し続けた。

ばかばかしいと思いながらも一度は押してみたい、という人間の本能なのかもしれない。

いつしか観光地のようになり、多くの人がボタンを押していった。

装置は変わらず、ボタンをもとの位置に戻し続けた。

 

とうとう装置の動きが止まる時がきた。

装置の故障ではなく、押す人類がいなくなってしまった。

よその国の、恐るべき装置。推すべからざるボタンのほうが押されたのだ。

ミサイルが飛び交い、すべての生物が消え去った。

 

装置は再び誰かが歩み寄ってボタンを押すのではないかと待ち続けた。

しかし、ボタンは押されることなく月日が流れた。

強力な合金に守られた装置の内部の時計は、ボタンが最後に押されてから1000年の時が経過したことを告げた。

それは、もはや人類の全部が滅びたことの判断だった。

 

装置はそのときはじめて、本来の機能を発揮した。

それは最初であり、最後でもあった。

装置はこの1回のために制作されたのだから。

 

装置内部の録音装置が作動し、言葉を発した。聞くものはだれもいない。

人類とその文明に対する弔いの言葉。また、悲しみと別れの声でもあった。

それを語り終えると、葬送の曲となった。

音楽は重々しく、虚しく、廃墟となった都市を這い、遠い地平線の彼方へと遠ざかっていった。

装置は動きを止め、静かな空間が再び戻った。

 

 

 

はーーーーーーー!!!!いいよね……

地位も権威も権力も手に入れた学者が最後に作るのがこんな、人間愛にあふれた装置だなんて…

「役に立つ」のスケールが大きすぎて好きです……人類への、文明への、地球への巨大感情……愛……

今後数年、数十年の未来じゃなくて、数千年先を見据えた科学者…

そして「作動しないほうがいい」装置を、私財をなげうって己の研究人生の最後の時間を使って作る科学者……好き……

個人的には、予算流用してくれた監査官にだけ、あとで使用目的をこっそり教えてあげてたらいいな…

そして監査官も誰にも漏らさないまま死んでいくのよ……良い……

私の「科学者とはかくあるべき」像はここからきているのかもしれない。

批判も称賛も意にも介さず、自分の信念を貫く。

一番の幸せは自分の思い描いた計画がうまくいくこと。

それ以外は全部取るに足らない。

いや~~~~~いいですね…かっこいいですね…

ていうかこの装置、どこかの大企業か資産家が作ってくれないかな……

 

というわけで、星新一作品の中には誰しも必ず刺さる一編があるから、みんな星新一を読もう。

短編集だから通勤通学時間に最適ですよ。